VoIPの必要帯域とは、音声データと通信ヘッダーを含め、通話を運ぶために必要な通信容量です。G.711・20 ms・IPv4・RTP拡張なしなら、片方向のIP層で1通話80 kbps、100通話8 Mbpsとなります。暗号化やリンク層などは別途加算が必要です。本記事では混雑時の音声品質を守るための計算と実測の注意点を解説します。
音声技術の基礎|第6回
「G.711は64 kbit/sだから、100通話なら6.4 Mbit/sあれば足りる」とは限りません。音声パケットには配送や制御のための情報が付加され、回線のどの層を測るかでも数値が変わります。本記事では、条件を明示した計算例から必要帯域の見積もり方を説明します。
VoIPの必要帯域とは?計算条件をそろえる
ここではG.711・モノラル・20 msごとの連続送信、IPv4の基本ヘッダー、UDP、拡張のないRTPを使います。無音抑圧、暗号化の追加分、VPN、リンク層は最初の計算から除きます。1 kbit/sは1,000 bit/sです。
このように除外項目を明示することで、見積もりと実測の差を説明できます。「1通話の帯域」という表現だけでは、片方向か双方向か、音声のみか回線上の合計かが不明確です。
G.711の帯域計算:1パケットと1通話の通信量
音声データは64,000 × 0.02 ÷ 8=160バイトです。これにIPv4の20バイト、UDPの8バイト、RTP基本ヘッダーの12バイトを加えると、IPパケットは200バイトになります。

20 ms間隔なら1秒間に50パケットなので、200 × 8 × 50=80,000 bit/sです。従ってこの条件の片方向・IP層での値は80 kbit/sです。64 kbit/sとの差の16 kbit/sが、ここで計算したヘッダー部分です。
パケット化間隔が必要帯域と音声品質に与える影響
| 間隔 | 音声/パケット | 毎秒パケット数 | 片方向IP層の帯域 |
|---|---|---|---|
| 10 ms | 80バイト | 100 | 96 kbit/s |
| 20 ms | 160バイト | 50 | 80 kbit/s |
| 40 ms | 320バイト | 25 | 72 kbit/s |
音声自体のビットレートは同じでも、パケット数が多いほどヘッダーの合計が増えます。ただし間隔を長くすれば、蓄積時間や1パケット損失時に欠ける音声時間も増えます。表は計算例であり、40 msを推奨する意味ではありません。
同時100通話の計算方法:上り・下りを分ける
上記の20 ms条件で100通話なら、片方向の合計は8 Mbit/sです。双方向のデータを合算すれば16 Mbit/sですが、全二重回線の容量を考えるときは上り8 Mbit/s、下り8 Mbit/sとして、それぞれの利用可能帯域と比較します。
会議、録音への複製、メディア中継がある構成では、1通話が計測区間を何本のストリームとして通過するかも変わります。電話の本数をそのまま掛けず、見積もるリンク上のストリーム数を数えてください。
呼の発生頻度と維持する数を区別するために、CPSと同時通話数の違いも確認してください。
コンタクトセンターでの注意点:暗号化と業務通信
- IPv6、RTP拡張、SRTPなどによるサイズの差。
- VPNやトンネルが追加する外側のヘッダー。
- Ethernetなどリンク層で必要になる情報。
- RTCP・SIP・業務アプリの通信と、混雑時の余裕。
追加量は方式によって異なります。特定の比率を一律に足せば十分とはせず、採用構成と回線契約の測定単位を照合します。無音抑圧で平均量が減っても、全員が発話する時間を支えられるかは別に検証します。
混雑時の優先制御については、QoS・DSCPと回線容量の考え方で、帯域確保との役割の違いを整理しています。
確認・改善方法:実測と負荷試験で余裕を検証する
20 msの100通話は片方向で毎秒5,000パケットです。帯域に余裕があっても、装置の暗号化処理、キュー、パケット処理が先に制約になる場合があります。同時通話を段階的に増やし、遅延・損失・CPU負荷を記録します。
最終的には、想定するピーク時の音声と業務通信を重ね、各方向の実測値と音声品質を確認します。計算は必要条件を整理する手段であり、品質を保証する試験の代わりにはなりません。
計算した条件を実環境で確かめるには、ピーク負荷時の音声品質評価も組み合わせます。
Hzで表す音の範囲と、kbpsで表す回線容量の違いは、音声帯域とサンプリング周波数の解説で確認できます。
よくある質問
G.711では1通話あたり何kbps必要ですか?
音声データだけなら64 kbpsです。20 ms間隔、IPv4基本ヘッダー・UDP・RTP拡張なしなら片方向のIP層で80 kbpsになります。SRTP、VPN、リンク層、制御通信などは別に加算します。
100通話には上りと下り合計で8 Mbpsあれば足りますか?
上記のG.711・20 ms条件では上り8 Mbps、下り8 MbpsがIP層の音声ストリームの計算値です。全二重回線では各方向を別々に比較し、追加通信と混雑時の余裕も見込みます。
VoIPの帯域に何%の余裕を設ければよいですか?
一律の割合では決められません。暗号化・トンネル・リンク層、業務通信、回線の測定単位とピーク条件を確認し、実測と負荷試験で余裕を検証します。
帯域が足りていれば音切れは起きませんか?
帯域だけでは保証できません。パケット損失・ジッター、端末や装置の処理能力、優先制御なども関係します。想定ピークで送受信方向別の通信量と音声品質を確認してください。
参考規格・資料
CC Assuranceで確認できること
CPS・同時通話数・通話経路に合わせて試験を設計する際は、Cruncherによる負荷試験と国内導入支援をご覧ください。負荷試験のシナリオと実施条件を相談するから、自社の構成に合わせた確認範囲をご相談いただけます。