負荷試験では予定した本数の電話がつながり、接続成功率も良好だった。それでも本番では「忙しい時間だけ声が途切れる」と言われることがあります。
接続が成立することと、聞き取りやすく会話できることは別です。負荷試験に音声の確認を組み合わせると、電話の量が増えたときの利用体験まで、必要な範囲で評価できます。
この記事でわかること
- 接続成功率だけでは会話品質が分からない理由
- 負荷と音声を同時に測る試験の組み方
- 平均値だけに頼らない結果の読み方
1.図で理解:「つながった」の先を確認する

電話の接続状態が正常でも、音声データの一部が届かなかったり、処理が間に合わなかったりすれば、聞き取りにくさが起きる場合があります。一方で、負荷が高くても品質を保てる構成もあります。どちらかを決めつけず、測定して確かめます。
音声は、回線、コンタクトセンター基盤、ネットワーク、担当者の端末などを通ります。どこまで経由した音を測ったのかで、結果が示す範囲は変わります。
2.混雑時に、音声へ影響し得るもの
通信の混雑
声を運ぶデータが一部欠けることをパケットロス、届く間隔のばらつきをジッターと呼びます。通信経路が混雑した場合などに、こうした状態が変化することがあります。
音声を処理する機器や端末
SBCなどでの音声形式の変換、暗号化、担当者のパソコン上の処理などが関係する場合もあります。同じ通話数でも、使用する機能や端末条件によって負担は違います。
電話以外の通信との重なり
画面共有や録画、他の業務通信と同じ経路を使っている場合、音声だけの試験と実運用で条件が異なることがあります。Genesysのネットワーク準備ガイドも、音声帯域や他の通信、音声の優先制御を考慮しています。参考:Customer network readiness
これらは確認すべき候補です。音声が悪化したという事実だけで、特定の機器や回線が原因と断定することはできません。
3.測る前に、区間と方向を決める
「音声品質も測った」という説明だけでは、対象範囲が分かりません。例えば次の測定は、それぞれ意味が異なります。
- 自動発信側で音声案内を受信:発信側へ戻る案内の品質を確認する。
- 担当者側で試験音声を受信:担当者が聞く方向の、測定点までの品質を確認する。
- 担当者側から試験音声を送信:発信側で受け取り、逆方向の品質を確認する。
アプリ内で音声を取得する場合、実際のヘッドセットのスピーカーや周囲の騒音まで含まれるとは限りません。測定点と対象外の部分を、構成図へ明記します。
基準音声を比較するPESQ・POLQAのような方式と、通信統計から推定する方式も区別します。方式や条件が異なる数値を、同じ物差しとして単純に並べないようにします。参考:ITU-TのMOS用語
評価方法を選ぶ際は、MOS・PESQ・POLQAの測定方法を参考に、音声比較と通信統計の役割を分けます。
4.低負荷・ピーク・回復を、同じ条件で比べる
- 低負荷:少ない呼で音声を測り、比較の基準を取ります。
- 増加中:承認範囲で負荷を増やし、音声の変化が出る条件を記録します。
- ピーク保持:予定した量を維持し、一時的でない変化があるかを確認します。
- 回復:負荷を下げ、品質や通信状態が元に戻るかを確認します。
- 再試験:改善した箇所を記録し、同じ条件で比較します。
基準音声、音量、コーデック、経路、測定方向をそろえます。負荷以外も同時に変えると、何が品質に影響したかを判断しづらくなります。
各段階の負荷は、CPSと同時通話数による負荷条件の決め方に沿って、呼の速さ・数・保持時間で定義します。
5.全呼を測る?一部を測る?
負荷を作る呼と、詳しく音声を測る呼を分ける構成もあります。例えば多数の呼を発生させながら、代表的な経路に測定用の呼を流す方法です。全呼で測定できるかは、ツール、契約、受話先、記録容量によって異なります。
一部を測る場合は、測定呼も実際に評価したい機器や経路を通すことが重要です。別の回線や別の拠点だけで測っても、混雑している経路の品質は分かりません。
レポートには、全体の呼数、測定対象の呼数、対象経路、方向、時間帯を記載します。一部の良い結果をもって、すべての呼が良好だったと説明しないようにします。
6.残したい記録と、結果の読み方
| 記録 | 分かること |
|---|---|
| CPS・同時呼数・時刻 | どの負荷段階で変化したか |
| 測定方式・方向・経路 | 何と何を比較できるか |
| 品質値の分布と低い呼の割合 | 平均では隠れる一部の劣化 |
| 無音・片通話・切断・測定失敗 | スコアが取れない問題の件数 |
| 取得可能な音声・通信統計・機器ログ | 現象と原因候補を照合する手がかり |
音声が取れなかった呼を平均値から除外するだけでは、問題が見えなくなります。数値が計算できた呼と、測定が成立しなかった呼を分けて報告します。
品質が下がった時刻と、ネットワークや端末の異常が同時だったとしても、それだけで原因が確定するわけではありません。条件を絞った再試験などで確かめます。
7.合格基準は、接続と音声を分けて決める
接続成功率、案内完了率、音声の基準、許容する低品質呼の割合などを別々に定義します。どのMOS値なら合格かは、測定方式、コーデック、対象の業務に合わせて合意します。
聞こえの品質が良好でも、会話の遅延や二重発話の問題が残る場合があります。会話体験まで評価する目的なら、必要な追加測定や人による確認を組み込みます。
クラウドや回線事業者の事前承認、試験用データ、音声記録の保管、中止条件も準備します。試験音声を実際のお客様へ誤送信しない受話先の設計も重要です。
8.相談時は、負荷と測定したい場所を共有する
想定する着信量とピークの長さに加え、「担当者側の聞こえを確認したい」「在宅拠点まで含めたい」など、測定したい場所を共有してください。必要な受話環境や音声の取得方法を検討できます。
混雑時にも会話できることを確認するには、負荷の作り方と音声の測り方を合わせて設計します。Cruncherによる負荷の再現とSoftware AGDによる音声品質評価をご確認ください。測定したい場所と想定する呼量をもとに、負荷試験と音声品質評価を相談するからご相談いただけます。組み合わせや測定範囲は個別構成で確認します。
対象基盤ごとの進め方は、Genesys Cloudで負荷と音声品質を確認するサービス、Amazon Connectの負荷・音声品質を検証するサービスで紹介しています。測定対象を顧客側・担当者側のどこまで含めるかを決めて、試験を構成します。
まとめ:混雑時にも会話できることを、測定で確認する
電話がつながることは出発点です。音声の区間・方向・方式を決め、低負荷からピーク、回復まで同じ条件で比べることで、負荷試験を実際の会話品質の確認につなげられます。
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公式資料の確認日:2026年9月18日。利用条件や仕様は、実施前に最新の情報をご確認ください。