音声技術の基礎|第8回
音声パケットが届かなければ、その時間の声を元のデータのまま再生できません。ただし、同じ損失率でも聞こえ方が同じになるとは限りません。この記事では、損失の続き方と受信側の補償処理に注目して、音声品質への影響を説明します。
1. 損失率は、失われた数の割合
単純化すると、損失率は「失われたパケット数÷期待されたパケット数」です。例えば1,000個のうち10個が欠ければ1%になります。実際の統計では、重複、遅着、観測区間の扱いなどが異なるため、製品の定義を確認してください。
ネットワーク上で消えたパケットと、到着したが再生に間に合わなかったパケットは区別します。どちらも音声の欠落につながりますが、回線の損失統計に同じように現れるとは限りません。
2. 分散した損失と、連続する損失
正常なパケットを挟んで1個ずつ失われる場合と、複数個が続けて失われる場合では、音声の欠け方が変わります。連続する損失をバースト損失と呼びます。

20 msの音声を入れたパケットが3個続けて失われると、60 ms分のデータが欠けます。3個が離れて失われた場合も失われた総時間は同じですが、周囲の音声から補う難しさや、欠ける発話内容は異なります。図は説明用の短い並びで、推奨損失率を示していません。
3. PLCは失われた音を推定して補う
PLC(Packet Loss Concealment)は、欠落した部分を周辺の情報などから補い、聞こえ方への影響を抑える処理です。元のパケットを受信し直す仕組みとは異なります。G.711にも欠落補償を扱う付録があり、実際の動作はコーデックや端末の実装で変わります。
短い欠落を目立ちにくくできても、長い連続欠落を元の発話どおりに復元できるとは限りません。特に数字や固有名詞では、短い部分の欠落でも業務上の影響が大きくなることがあります。
受信しても再生に間に合わない場合があるため、ジッターバッファと遅着の影響も区別して確認します。
4. FECや再送とは役割が違う
FECは追加の情報を送って損失からの回復を助ける方法です。再送は失われたデータをもう一度送る方法です。PLCは受信側で欠落部分を補います。これらは組み合わせられる場合がありますが、すべての通話が対応しているわけではありません。
FECには追加帯域、再送には到着までの時間という条件があります。再生期限を過ぎれば利用できないため、対応機能を有効にしただけで損失問題が解消すると考えないことが大切です。
5. 損失を調べるときの3つの観点
- どこで:送信側と受信側の観測を比較し、欠落が生じる区間を絞る。
- いつ:混雑、経路変更、無線の移動などと発生時刻を照合する。
- どう続くか:平均率だけでなく、連続欠落数や短い区間の悪化を見る。
パケット取得装置自身が取りこぼしていないかも確認します。取得結果に欠番があっても、それだけで相手端末に届かなかったとは断定できません。端末の受信統計や補償サンプルの情報を併用します。
損失の数値を照合する際は、RTP・RTCP統計の方向と観測区間をそろえてください。
6. 試験では同じ損失率でパターンを変える
管理された試験環境で、損失なし、分散損失、連続損失を比較します。音声、コーデック、パケット化間隔、受信端末を固定し、変えるのは損失の条件だけにします。試験用ネットワークの設定であり、本番通話へ意図的に障害を与える手順ではありません。
結果には損失率だけでなく、補償の動作、聴感、重要な語句の聞き取り、短時間の品質低下を残します。平均損失率の小ささだけで合格とせず、必要な会話が成立するかを判断してください。
聴感と測定値を比較するには、音声品質の評価方法と条件で、測り方の違いを確認できます。
参考規格・資料
基準音声と実通話の比較、測定位置・方向を整理する際は、Software AGDによる音声品質評価をご覧ください。音声品質の測定範囲と評価方法を相談するから、自社の構成に合わせた確認範囲をご相談いただけます。