コールセンターの音声品質を評価する方法|MOS・PESQ・POLQA

MOSはMean Opinion Scoreの略で、代表的な主観評価では人が付けた評点の平均を表します。PESQとPOLQAは、基準音声と通信後の音声から聞こえの品質を予測する評価方式です。製品の「MOS」表示が人の採点値なのか推定値なのかを区別します。

同じMOS表記でも、測定方式・版・対象音声・条件が異なる数値をそのまま比較することはできません。本記事では、各方法に何を入力し、どの範囲を評価するかを整理します。

この記事でわかること

  • MOSと、PESQ・POLQAの役割の違い
  • 測定方法が違うスコアを単純比較できない理由
  • 音声評価を進める手順と記録する条件

1.図で理解:人が聞く評価と、計算による推定

人が評価対象の音声を聞く主観評価と、元の音声と受信した音声をPESQやPOLQAで比較して品質を推定する方法の違い
主観評価と客観的な推定は別の測定方法です。PESQの旧規格の現在の位置づけは本文で説明します。

人が実際に音声を聞いて評価する方法を主観評価と呼びます。人の感じ方を直接集められますが、評価環境や参加者、手順をそろえる必要があります。

一方、音声データなどから品質を計算する方法は客観評価です。同じ条件で繰り返し測定しやすく、多数の試験呼を比較する場面で役立ちます。ただし、人が評価した値と、計算で推定した値は同じものではありません。

評価の方法 主な入力・準備 分かること 比較するときの注意
人による主観評価(MOS) 評価音声、参加者、統一した試聴環境と手順 決めた条件で人が付けた評点の平均 参加者・尺度・音声・環境をそろえる
PESQ 基準音声と劣化後音声、測定モード 聞こえの品質の客観的な予測 旧P.862系列は撤回済み。既存記録は方式・出力値を明記
POLQA 基準音声と劣化後音声、対象の版とモード P.863に基づく聞こえの品質の予測 版・帯域・入力条件をそろえ、他方式と直接順位付けしない
通信条件・統計に基づく推定 遅延・損失・コーデック等、モデルが要求する情報 そのモデルと入力条件に基づく品質の推定 実音声の歪み等をすべて測るものではない。計算方式も確認
評価方法の選択を整理する表です。MOSという表示名だけで同じ測定方法とは判断せず、以下の各節の規格・条件を確認してください。

2.MOSとは、評価の平均を表す言葉

MOSはMean Opinion Scoreの略です。代表的な音声の主観評価では、複数の人が品質を1〜5の尺度で評価し、その平均を求めます。一般に、大きい方が良い評価を表します。評価の手順はITU-T P.800、用語の整理はITU-T P.800.1などで扱われます。

機器の画面にも「MOS」と表示されることがありますが、それが人の採点の平均とは限りません。音声比較や通信統計から求めた推定値である場合があります。レポートには「MOS」だけでなく、測定方法や出力指標の名称を残しましょう。

また、「聞いた音の品質」と「会話全体のしやすさ」も違います。音そのものがきれいでも、相手の返答が遅れれば、会話はしづらくなります。

3.PESQとは?既存の測定結果を読むときの注意点

PESQは、元の基準音声と、通信経路を通った後の音声を比較し、聞こえの品質を推定する方法です。旧ITU-T P.862系列で規定され、既存の試験環境やレポートで目にすることがあります。

ITUでは、P.862・P.862.1・P.862.2・P.862.3が古くなったため、2024年1月5日に削除・撤回されたと案内しています。現在はP.863系列を参照するよう示されています。出典:ITU-T P.862の規格情報
(2026年10月6日再確認)

これは、過去のPESQ測定記録をすべて捨てるという意味ではありません。既存設備との比較には、使用した規格、実装、出力値、測定モードを確認します。新しい評価方式を選ぶ際は、現行規格への対応も判断材料になります。

4.POLQAとは?対象条件を確かめて使う

POLQAは、ITU-T P.863に基づく音声品質の推定技術として知られています。元の音声と劣化後の音声を使い、人が聞いたときの品質を推定します。ITU-T P.863の規格情報を確認してください。

広い音声帯域を扱う環境でも利用されますが、どんな録音を入れても同じように評価できるわけではありません。使用する版、モード、サンプリング周波数、基準音声の条件などが適切かを確認します。

PESQとPOLQAで同じ数値が出ても、同じ品質を意味すると決めつけないようにします。方式を変えるときは、同じ音声を両方式で測るなど、新旧の比較ができる材料を残します。

5.通信統計からの推定と、音声比較は役割が違う

運用中の監視では、元の基準音声を用意できない場合があります。そのため、遅延やパケットロス、コーデックなどの情報から品質を推定する方式も使われます。関連するモデルの一つにITU-T G.107のE-modelがあります。ただし、すべての製品のMOS推定が同じ計算方式とは限りません。

通信統計は、回線やネットワークの状態を調べる手がかりになります。一方、実際の音声に含まれる歪みや音量の問題まで、その情報だけで分かるとは限りません。利用目的に応じて、音声の測定と運用監視を組み合わせます。

通信統計を音声の症状と照合する際は、RTP・RTCP・WebRTC統計の読み方を参考に、方向・単位・観測時間をそろえます。

6.音声品質を評価する5つの手順

  1. 対象を決める:音声案内、担当者の受話音声、お客様側の受話音声など、どこを測るかを決めます。
  2. 方向を分ける:お客様から担当者、担当者からお客様の双方を必要に応じて評価します。
  3. 方式を選ぶ:主観評価、基準音声との比較、通信統計からの推定を目的に合わせます。
  4. 条件をそろえる:音声ファイル、音量、コーデック、端末、経路、負荷を記録します。
  5. 比較と確認を行う:低負荷時や改善前後を比較し、問題のある音声も実際に確認します。

基準音声と比較する場合、試験で音声を送出・取得できる構成が必要です。実際のお客様の会話を無条件に収集するのではなく、試験用音声と保存ルールを準備します。

繁忙時の品質も対象にする場合は、低負荷・ピーク時の音声品質を比較する方法で、負荷と測定条件の組み合わせを整理できます。

7.数値を見るときの落とし穴

「MOSが一定値以上ならすべて合格」という基準を、環境を問わず使うのは適切ではありません。方式、帯域、コーデック、業務で求める品質をそろえて基準を決めます。

平均値だけが良くても、一部の呼が聞こえにくい可能性があります。方向別、拠点別、経路別に、低い値の呼の件数や割合も確認します。測定できなかった呼を除外すると結果が良く見えるため、無音・切断・測定失敗も別に報告します。

聞こえの品質スコアだけで、会話の遅延、二重発話時の状態、すべてのエコー問題を評価したことにはなりません。必要なら別の測定や通話確認を追加します。

MOSの数値を比較するときは、MOSを比較・合否判定に使う際の注意点も確認してください。測定方法、条件、分布をそろえることが大切です。

方式や設定を変更する場合は、コーデック変更前の音質・遅延・帯域の比較試験も参考に、同じ音源と経路で評価し、不合格や測定不能を含めて記録します。

8.相談時には「どこで、誰が聞きにくいか」を共有する

利用する電話システム、端末、発生する方向や拠点、時間帯、既存の品質レポートがあれば、評価方法を検討しやすくなります。製品の「MOS」表示がどの方式か不明な場合も、その確認から始められます。

評価手法を選ぶ際は、測定する区間・方向・音源・合否基準をそろえることが出発点です。Software AGDによる基準音声と通話音声の比較をご覧ください。ご利用環境での測定方法や対応範囲は、音声品質の評価方法を相談するからご確認いただけます。利用できる測定方式や機能は、対象製品の版・構成・契約条件に応じて確認します。

まとめ:スコアと一緒に、測り方を残す

MOS・PESQ・POLQAを理解するポイントは、人の評価と計算による推定を分け、測定条件をそろえることです。数字だけを比較せず、測った区間、方向、方式、実際の聞こえ方を合わせて判断しましょう。

資料・紹介動画を見る / 技術ナレッジ一覧

公式資料の確認日:2026年9月18日。利用条件や仕様は、実施前に最新の情報をご確認ください。

コンタクトセンターの品質・負荷試験についてご相談ください Genesys Cloud / Amazon Connect / Cyara に対応
無料相談・お問い合わせ