SBC更改時の負荷試験は、旧構成と新構成で同じ呼量・経路・操作を再現し、接続、音声、処理余力、切替時の動作を比較する試験です。CPSと同時セッション数を別に定義し、既存呼と新規呼も分けて確認します。
機器のカタログ値だけでなく、自社で使うコーデック変換・暗号化・接続先を含めた条件が重要です。少量の電話がつながったことだけで、繁忙時や切替後まで確認済みとは判断できません。
この記事でわかること
- SBCを交換するときに性能確認が必要な理由
- 呼の接続処理と音声を分けた試験項目
- 変更前後を比較する進め方
1.SBCは、電話ネットワークの境界を受け持つ
SBCはSession Border Controllerの略で、異なる電話ネットワークの境界に配置される装置やソフトウェアです。構成に応じて、呼の接続制御、通信の保護、接続先との調整、音声の中継などを担います。
電話をつなぐための信号によく使われるのがSIP、音声を運ぶ通信の代表がRTPです。「電話をつなぐ処理」と「実際の声を運ぶ処理」を分けて考えると、試験項目を理解しやすくなります。

図は概念図です。音声が必ずSBCを経由するとは限らず、構成によって中継の有無や対象が変わります。最初に信号と音声の両方の経路を確認しましょう。
接続の制御と音声の伝送を分けて整理するには、SIP・SDP・RTPの役割の違いをご覧ください。
2.なぜ、新しいSBCでも試験が必要なのか
更改では、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアの版、ライセンス、設定の初期値、暗号化、音声形式の変換などが変わる場合があります。同じ電話本数でも、利用する機能によって必要な処理量は違います。
また、性能不足に見える問題が、実際には設定した上限に達しただけという場合もあります。OracleのSBC公式資料でも、同時セッション数、呼の急増時のレート、継続的なレートを制約として設定できることが説明されています。これは一製品の例であり、他機種へ同じ値や項目をそのまま当てはめるものではありません。参考:Oracle SBCのsession-constraints
3.更改時に押さえたい5つの確認項目
① 呼の立ち上がり:短時間の発着信を処理できるか
CPSは、1秒あたりの呼の発生数を表します。試験では発信試行の数なのか、SBCが受け付けた数なのかを明記します。短い呼を次々に発生させたときの接続成功率、応答時間、拒否やタイムアウトを確認します。
負荷条件を決める際は、CPSと同時通話数の性能指標を参考に、呼の開始頻度と維持する数を分けて定義します。
② 同時セッション:つながった呼を維持できるか
多くの呼を一定時間維持したときの状態を確認します。「1通話」を何セッションと数えるかは、製品や接続の扱いで異なる場合があります。転送や複数の接続区間も考慮し、機器のカウンターと試験ツールの定義をそろえます。
③ 音声:双方向に届いているか
接続成功だけでなく、無音、片通話、途切れ、品質値の変化を確認します。音声形式を変換するトランスコーディングや暗号化を使用している場合は、実際の条件を試験に含めます。
コーデック変換を行う構成では、トランスコーディングが音声品質に与える影響も確認し、方式の組み合わせと変換を伴う呼の割合を試験条件に含めます。
④ 実際の電話操作:転送や番号入力が成立するか
代表番号、着信先の振り分け、発信者番号、保留・転送、DTMFと呼ばれるプッシュ入力などを確認します。負荷を上げる前に、少量の呼で基本動作を確認しておくと切り分けが容易です。
⑤ 復旧・冗長化:障害や負荷低下のあとに戻るか
二重化した構成なら、許可された手順で切り替えを試験します。すでにつながっている呼と、切り替え中に新しく入る呼は分けて確認します。既存呼が必ず無停止で引き継がれるとは限らないため、製品仕様と構成に沿って期待結果を決めます。
4.「同じ条件」で変更前後を比べる
変更前の基準がないと、新しいSBCで測った値が良いのか悪いのか判断しづらくなります。可能な範囲で、更改前にも代表シナリオの記録を取りましょう。
- 発信元、着信先、回線、番号、経路
- CPS、同時呼数、呼を維持する時間、発着信の割合
- コーデック、暗号化、音声変換の有無
- 転送などの操作、試験時間、合格基準
- ログの取り方と装置の時刻
更改前後で回線やコーデックも変わる場合は、「SBCだけの比較」にはなりません。変更点を記録し、どの条件が結果に影響したかを検討できるようにします。
| 比較項目 | 旧構成で残すこと | 新構成で照合すること |
|---|---|---|
| 装置と機能 | 機種・版・ライセンス・上限設定 | 変更点と承認済み要件 |
| 呼量と単位 | CPS・同時呼/セッション・保持時間・観測点 | 同じ単位・負荷パターンでの結果 |
| 音声と保護 | 区間別コーデック・変換・暗号化・測定方向 | 実使用方式と同条件の音声・遅延 |
| 通話操作 | 発着信・保留・転送・DTMFの期待結果と証拠 | 操作後に変わる経路と結果 |
| 切替・回復 | 既存呼・新規呼の期待動作、許容条件 | 切替中と復旧後の結果、未確認の条件 |
音声の条件が同じかを確かめるには、SDPとRTPから実使用コーデックを確認する方法を使って区間ごとに照合します。方式も変更する場合は、コーデック変更前の比較試験として変更点を分けて記録してください。
5.試験の進め方と残すべき記録
- 構成と差分を整理:旧・新の機種、ソフトウェア、ライセンス、設定、接続先を確認します。
- 合格条件と中止条件を決定:許容する失敗や遅延、復旧時間、緊急連絡先を共有します。
- 少量の呼で確認:接続・操作・音声・ログ取得が成立することを確かめます。
- 段階的に負荷を増加:承認範囲でCPSと同時呼数を変え、保持と回復を記録します。
- 改善後に再確認:変更した項目と結果を対応づけます。
記録には、負荷条件、成功・失敗数、失敗した時刻と理由、CPU・メモリなど取得可能な資源情報、音声の状態を含めます。CPUが低いから問題がないとは限りません。ライセンスや設定、メディア処理の資源なども確認します。
6.試験と切り替え計画は一緒に準備する
社内にあるSBCでも、接続先が通信事業者やクラウドサービスなら調整が必要です。外部に影響する負荷や障害試験を独断で実施せず、関係者と対象・時間・上限を合意します。
本番切り替えでは、問題が起きたときに元へ戻す条件と手順も必要です。負荷試験の合格は、試した条件での確認結果であり、未試験の番号や経路まで保証するものではありません。
7.相談時には、機種名と「変わる部分」を共有する
旧・新SBCの機種と版、回線構成、ピーク時の呼量、音声変換・暗号化の有無、更改予定日があると、試験範囲を具体化できます。構成図が未完成なら、接続先の一覧からでも整理できます。
更改前後のCPS・同時セッション数・通話操作をそろえて比較する方法は、Cruncherによる負荷試験と導入支援でご紹介しています。音声の変化も測る場合は、Software AGDによる音声品質評価を組み合わせる構成を検討します。SBC・回線・接続先を含む試験範囲は、SBC更改時の試験計画を相談するからご相談ください。
まとめ:カタログ値を、実際の構成で確かめる
SBC更改では、発着信の速さ、同時に維持する呼、音声、実際の操作、復旧を分けて確認します。変更前後の条件をそろえ、設定の上限と処理性能を混同せず評価することが、移行判断につながります。
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公式資料の確認日:2026年9月18日。利用条件や仕様は、実施前に最新の情報をご確認ください。