Genesys Cloudの負荷試験とは?方法・試験項目・注意点

Genesys Cloudの負荷試験は、承認された条件でテスト呼などを発生させ、混雑時にもIVR、ルーティング、外部連携、受話先への到達が要求どおりに動くかを確認する試験です。必要に応じて、対象区間の音声品質も測定します。

CPSと同時通話数に加え、どの経路をどの位置で測るかを決めます。少数の電話がつながることと、繁忙時にも必要な業務が完了することは別の確認です。

この記事では、負荷試験に初めて関わる方に向けて、図と具体例で全体像を説明します。詳しい申請条件や技術上の注意点は後半にまとめました。

この記事でわかること

  • なぜ、少数の電話による確認だけでは足りないのか
  • 何を、どのように試験するのか
  • 試験を相談する前に、何を用意すればよいのか

1.なぜ必要?「1本つながった」と「混雑しても使える」は違う

新しいコンタクトセンターで試しに電話をかけ、案内が流れて担当者につながったとします。これで、基本的な電話の流れは確認できました。

でも、同じタイミングで多くの電話が入った場合はどうでしょう。例えば、顧客情報を調べる処理が重なり、案内の途中で待たされるかもしれません。担当者が全員対応中のときに、想定した待ち時間の案内へ進むかも確認が必要です。

普段と電話が集中したときを比較し、接続、音声案内、聞こえ方を確認する図
電話の量が増えたときの動きを、本番前に確認します。

普段の動作を確かめるのが機能試験、混雑時にも動作するかを確かめるのが負荷試験と考えると分かりやすくなります。負荷試験では、あらかじめ決めた範囲でテストの電話を増やし、動きの変化を記録します。

特に、新規導入・クラウド移行、音声案内の改修、回線や接続機器の更改、繁忙期の前などが検討のタイミングです。

2.図で理解:テストの電話はどこを通る?

外線着信を確認する試験では、自動発信ツールから試験対象の電話番号へ電話をかけます。電話は回線を通り、Genesys Cloudの音声案内や振り分けを経て、設定した受話先へ進みます。

自動発信ツールから電話回線、Genesys Cloudの音声案内と振り分けを経て受話先へ。必要に応じ外部システムへ照会する構成例
外線着信の試験構成例です。接続方式や試験の対象範囲によって、実際の経路は異なります。

これは接続の一例です。実際には、利用する回線や接続方式、音声案内、外部システムとの連携によって経路が変わります。担当者への接続まで試験する場合は、人または試験用の仕組みで、電話を受ける準備も必要です。

まずは、次の3つの質問で試験範囲を整理しましょう。

① 電話はつながる?

予定した量の電話をかけたときに、対象番号へ接続できるかを確認します。つながらなかった件数だけでなく、接続までにかかった時間や、途中で切れた理由も記録します。

② 案内・取り次ぎは正しい?

IVR(自動音声応答)は、音声案内、番号や音声の入力受付、条件に応じた分岐などを行う仕組みです。「お問い合わせは1番を押してください」という案内のあと、入力に応じて正しい処理へ進むか、目的の担当窓口へ届くかを確認します。

顧客番号から契約情報を調べるような処理がある場合は、照会先のシステムも関係します。Genesys Cloudだけでなく、連携する部分まで含めて、予定した業務を終えられるかを見ます。

③ 声は聞こえる?

電話がつながっても、無音や途切れがあれば会話は成立しません。必要に応じて、音声の聞こえ方も測定します。

ただし、音声案内までの試験だけでは、担当者のパソコンやヘッドセットまで確認したことにはなりません。どこからどこまでの音声を測るかを事前に決めることが大切です。

接続した本数に加えて、負荷試験で音声品質まで確認する方法を押さえると、混雑時の会話の確認範囲を決めやすくなります。

3.具体例:電話の「入ってくる速さ」と「つながっている数」

試験計画でよく使う言葉が、CPSと同時通話数です。どちらも電話の量に関係しますが、見ているものが異なります。

試験条件に落とし込む際は、CPS・同時通話数・呼保持時間の考え方で、数える位置と時間の定義をそろえてください。

CPSは1秒間に発信を始める電話の数、同時通話数はその瞬間につながっている電話の数。2 CPSと6通話を別々の例として示す
CPSは発信の速さ、同時通話数はその時点の数。図の数字はそれぞれ別の説明例で、推奨値や上限ではありません。

CPS:1秒間にかけ始める電話の数

ここでは、テストで発信を試みる速さをCPS(Calls Per Second)と呼びます。例えば2 CPSなら、1秒間に2本のペースで電話をかけ始めるイメージです。これは説明用の数字で、推奨値や許容上限ではありません。

同時通話数:その瞬間につながっている電話の数

例えば、ある時点で6本の電話がつながっていれば、同時通話数は6です。担当者と会話している電話だけでなく、音声案内中や待機中の呼を含めるかも、測定条件としてそろえます。

同じペースで電話がつながり続けるなら、1本あたりの電話が長いほど、同時につながる数は増えます。そのため、発信の速さ・電話を維持する時間・同時につながる数をセットで考えます。

例えば「短い電話が次々に入る窓口」と「長い相談が続く窓口」では、同じ同時通話数でも処理の負担は違います。自社の窓口に近い条件を再現しましょう。

4.どう進める?負荷試験の5つのステップ

STEP 1 何を確かめたいかを決める

「移行後も繁忙時の着信を受けられるか」「新しい顧客照会が集中しても遅くならないか」など、確認したい業務を決めます。対象番号、音声案内、受話先、関連するシステムを整理しましょう。

合格の条件も先に決めます。接続できた割合、案内が完了した割合、待たされた時間など、業務で困らない条件を関係者で共有します。

STEP 2 実施条件を申請・調整する

Genesysの事前承認を得て、試験の日時、対象、負荷量を確定します。回線事業者や外部システムの担当者とも必要な調整を行います。具体的な申請条件は次の章で説明します。

STEP 3 お客様の操作を再現する

「代表番号へ電話 → 案内を聞く → 1番を押す → 顧客情報を照会 → 担当者へつなぐ」のように、試験の手順を作ります。この手順をテストシナリオと呼びます。

実際の利用状況に合わせ、案内だけで終了する電話や、担当者への接続を待つ電話などを組み合わせます。

STEP 4 少量から始め、段階的に増やす

まず少ない電話で、シナリオと記録が正しいかを確認します。その後、承認された条件に沿って負荷を増やします。異常が出たら止められるよう、中止条件と連絡先も用意しておきます。

STEP 5 問題が起きた場所を調べ、再確認する

つながらなかった電話や、処理が遅かった時刻を手がかりに、関係するシステムの記録を照合します。設定や構成を見直したあとは、同じ条件でもう一度試し、改善したかを確認します。

5.実施前に知っておきたい注意点

Genesysへの事前申請が必要です

Genesys公式FAQでは、すべての自動試験に事前承認が必要です。予定日の少なくとも2週間前までにProduct Supportチケットを提出し、テスト環境へのアクセスを申請するよう案内されています。

実施時間はリージョンの時間帯で23時〜翌5時、年末の最後の2週間と年始の最初の1週間は通常、負荷試験を認めない期間とされています。開始時の最大レートは10 CPSで、その後引き上げる方針です。これはサービス全体の性能上限ではありません。

対象環境や実施条件は、最新の手続きと個別の承認内容に従って決定します。出典:Genesys公式・自動試験と負荷試験のFAQ(2026年10月6日再確認)

確認項目 計画書に残す内容
事前承認 申請した対象・目的と、個別に認められた試験条件
環境と経路 対象リージョン・試験環境・番号・回線・受話先・外部連携先
実施日時 地域のタイムゾーン、承認された試験枠、実施不可期間との照合
呼量 開始・最大CPS、同時呼数、保持時間、増減方法と観測位置
中止と連絡 停止の判断条件、判断者、試験中の連絡先
試験計画の確認表です。各項目の値は個別の承認と構成で確定します。Genesys公式FAQの条件は2026年10月6日に再確認しました。

「試した範囲」と「まだ試していない範囲」を分けます

試験用の回線や受話先が本番と違う場合、その結果をどこまで本番へ当てはめられるかを整理します。本番環境で実施できるかも、一律に判断せず、Genesysと関係者が認めた条件で決めます。

試験に合格しても、あらゆる状況で障害が起きないことを保証するわけではありません。大きな設定変更をしたときの再試験や、運用中の監視と組み合わせます。

大きな設定変更や移行の前後は、設定変更・移行前後の電話監視も組み合わせ、試験後の重要経路を継続して確認します。

移行前後の業務動作を比較する場合は、クラウド移行時の動作同等性と回帰テストで、維持する動作と意図して変更する動作を分けて整理できます。

通話料や試験データも準備します

テストの電話にも通話料などが発生する場合があります。発信側の回線容量、外部サービスの従量課金、使用する顧客データの代わりとなる試験用データ、録音やログの取り扱いを確認します。

6.試験結果を判断するときの技術的なポイント

試験後は、失敗した件数だけを見るのではなく、どの条件で、どの段階が変化したかを整理すると改善につなげやすくなります。

  • かけた電話と届いた電話を分ける:発信側や回線側の制限によって、予定した負荷が対象まで届かない場合があります。
  • 外部連携の待ち時間を見る:顧客照会の応答が遅いと、待っている処理が増えることがあります。GenesysのData Actions(外部システムと情報をやり取りする機能)にも、同時実行や処理量の制限があります。
  • 音声の評価条件をそろえる:音声品質を数値で比較するときは、測定方法、方向、対象区間をそろえます。数字だけでは原因や聞こえ方のすべては分かりません。

Data Actionsの応答時間と同時実行数の関係は、Genesys公式の性能分析ガイドでも説明されています。詳しい結果分析では、発信ツールとGenesys Cloud、連携先の記録を組み合わせて確認します。

7.自社では何から始めればよい?

最初から正確なCPSやすべての試験項目を決める必要はありません。相談時には、次の情報があると計画を立てやすくなります。

  • いつ:導入・移行・キャンペーンなどの予定時期
  • どれくらい:普段と繁忙時の着信件数、平均的な通話時間。分からない項目は未確定で構いません。
  • どんな流れ:代表番号から案内・担当者につながるまでの流れ
  • 何が心配:つながりにくさ、照会の遅延、音声の途切れなど

Cyara Cruncherは、テスト呼などを自動生成し、電話が集中したときの顧客接点の性能を検証するソリューションです。多数の人が手作業で発信する代わりに、シナリオと負荷条件に基づいた試験に利用できます。機能や測定範囲は、構成・契約に応じて確認します。参考:Cyara公式「Cruncher」

CCアーキテクトでは、Genesys Cloud負荷試験の計画、実行、結果整理、改善ポイントの提示までを支援します。

Genesys Cloudのコールフロー、想定する呼量、外部連携先が分かれば、確認すべき範囲を具体化できます。Genesys Cloud負荷試験サービスの試験内容・進め方をご覧ください。計画前の段階でも、Genesys Cloudの負荷試験を相談するからご相談いただけます。

まとめ:混雑した日も、予定どおりに使えるかを確かめる

負荷試験は、大量の電話をかけること自体が目的ではありません。お客様が電話をかけてから必要な案内や対応を受けるまで、混雑時にも予定どおりに進むかを確かめるためのものです。

まずは「つながるか」「案内・取り次ぎは正しいか」「声は聞こえるか」の3つを起点に、自社で確認したい範囲を整理してみてください。

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